お一人暮らし高齢者の持家を下宿先に

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2024年の年末、胸を痛める事件が続きました。

福岡県北九州市では12月14日、マクドナルドで中学生2人が無職男性に襲われ、女子学生が死亡。

わが兵庫県でも、続く12月18日、県下一の繁華街である三ノ宮駅にて70代の女性が包丁で刺されるという通り魔的犯行が発生。こちらも被疑者の女性は職業不詳。

このような事件が発生するたびに、中高年ひきこもり者は危険。ニートは危険。隔離すべきという暴論がSNSで蔓延します。

まったくの暴論。もちろんこのような痛ましい事件は起こるべきではなく、事件の加害者を擁護するわけではありません。

しかし、このような犯行に至らしめた背景の理解はするべきでしょう。

誰にも相談できない。社会との接点がない。話し相手もいない。事件の全容はいまだ解明されていないものの、そのような要因が考えられる。

社会が処方箋を用意すべきです。ただ加害者を責め立てて、「重罰を与えよ!」とシュプレヒコールをあげるのは無意味な行為です。

通り魔的犯行のように、自暴自棄になって犯罪行為に加担している方には重罰による犯罪抑止効果は望めません。正直言って、ムダです。

もう20年以上前から分かっていることです。

例えば、2001年に起きた大阪の池田小学校児童殺傷事件。1,2年生の児童8名を殺害。被疑者の宅間守氏は「死刑になるのが目的」で犯行に及んだと供述しました。

宅間守氏は2004年に死刑執行。死刑と言う最高刑が課されたわけです。その後、犯罪は減りましたでしょうか。刑法による犯罪抑止効果は期待できません。

空き部屋活用で、社会の居場所作りをしませんか

私も精神障害者の一人として、低年収で救いようがない人生を送っているものとして、まったく他人事ではありません。

地元兵庫県で起きた三宮の通り魔事件は、被害者にも加害者にもなりうるなと素直に感じています。

なにか社会が処方箋を用意できないか。有用な地域資源の発掘・活用ができないか。

少し考えてみたいと思います。

去年は、若年ひきこもり者、中高年ひきこもり者に対する悪質な支援団体(引き出し屋もどき)の事件を追及しました。常に関心を持ち続けています。

※私はひきこもりではなく、社会的難民が適当な言葉であると思います。人口に膾炙していることもあり、あえて「ひきこもり」というワードを使用するのをお許しください。

ここで、処方箋の対象者を限定させてください。

まず中高年ひきこもり者の方。職場でパワハラ被害に遭い、現在の日本の悪質な労働環境に出ることに不安を覚えている方。経済的に一人暮らしが難しく、親との同居を余儀なくされている。

親御さんからのため息地獄の中。ともかく同居家族と離れて穏やかに暮らしたい。

ここに、お一人暮らし高齢者の方を組み合わせたいと思います。

私自身、警察に家凸されたことがあります。「ここの集合住宅の〇号室の〇〇さんがなくなっている。お顔確認できますか」。

孤独死が一気に身近な問題に感じられました。その後、便利屋さんが生活家財一式をトラックに積み、その際に腐臭が漂ってきました。お痛ましいことです。

昔と違い、ご近所同士の交流も少なくなりました。孤独死の背景です。

高齢者の方は戸建ての住宅所有率が高い。内閣府の令和5年の高齢社会白書によると、65歳以上の方の8割以上が持家に居住しています。

そのうち、一戸建てが75.6%です。お子さんが成人され、家を出ていく。当然、空き部屋が多い。

中高年ひきこもり者、あるいは低年収で経済的に苦しい方を対象に、高齢者の方の戸建て住宅に割安で下宿させる住宅支援制度を設けるのが一つの処方箋になりえます。

西欧諸国と違い、日本には低所得者層に対する公的な家賃補助制度がありません。会社勤めをされている方は給与に上乗せして、住宅手当をもらっていますが。

中高年ひきこもり者を筆頭に、会社勤めをされていない方は一銭も補助がないのです。車も貯金もない。丸裸になってから着物を着せてあげるという生活保護しかありません。

段階的な社会福祉政策としても、独居老人宅の空き部屋の下宿利用は有用な処方箋です。

一人にさせてはいけない。孤独にさせてはいけない。冒頭で触れた痛ましい事件も、社会との接点がなくなったからこそ。

中高年ひきこもり者(社会的難民)の方も、お一人暮らしの高齢者の方も、ひとりきりにさせてはいけないんです。

家族との同居はまったくお話にならない。甘えが出る。他者との関り、社会との関りが重要です。

年金生活者に、収入の柱がもう1本できますよ

高齢者の方にとってもメリットがあります。家賃収入が入ってくるのです。

年金生活者にとって、たとえ少額ではあっても、家賃収入という収入の柱がもう一本できるのは非常にありがたいはず。

一般的な大家さんのように何軒や何棟も貸出用の住居を持つ必要がありません。空き部屋という住宅資源を活用すればいいのです。

孤独死対策にもなるでしょう。高齢者の方のお一人住まいは危険が多い。溺死も多い。お風呂場で転倒し、そのままお亡くなりになるケースも。階段からの転落死もある。

病気だけが危険ではない。家庭内事故による死亡者が多い。厚生労働省の「人口動態統計」によると、2023年で1万6千人の方が亡くなり、そのうち9割以上が高齢者です。

空き部屋の賃借り人に介護させるわけではありませんが、下宿先で食事と住居を用意してくれている大家さん。そんな方が下宿先で転倒しているのを見つければ、すぐに救急車を呼ぶ。

それくらいは人情でしょう。

高齢者の一人暮らしは、得てして高齢者ひきこもり状態となっている場合も多い。

食事や洗濯など、下宿人の面倒をみる。家族以外の方と交流を持つこと自体もメリットです。

まとめ

昔の日本では家の空き部屋に下宿人を置くのは一般的でした。フジテレビのヒット作、1993年のホームドラマ「ひとつ屋根の下」でも下宿人が出てきましたね。

高齢者の住居所有率は高く、空き部屋が多い。ここに実家暮らしをしたくない中高年ひきこもり者、低年収世帯に割安で貸し出すことが出来れば。

ルームシェアよりも安くできるはず。大家さんである高齢者の孤独死を防ぐという予防効果もある。お互いにとって社会との接点ができるのはよいことです。

低年収世帯への家賃補助制度がないのですから、行政も少しは下駄を履かせるべきです。

私もそうですが、実家暮らしはひきこもり者(社会的難民)の方にとってほんとに辛いんです。自宅でゆっくりできる時間などない。

常に家族から白い目で見られ、愚痴や嫌味、ため息ばかりつかれる。フキハラ被害に遭う。割安で借りられる一人部屋があればどれだけ助かるか。

よい充電期間となるでしょう。実家暮らしで充電などできませんよ。当事者でないと理解できないでしょうが。

またお一人で暮らしている高齢者の方にとってもメリットは大きい。孤独死対策にもなり、年金生活者にとっては収入の柱がもう1本できる。

マッチングの難しさはあるでしょうが、そんなのはどこの世界にもあります。言い訳にはなりません。ぜひとも導入を考えるべきです。

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以下、”あとがき”です。

本来は、地方議員がこういう提言をしていくべきでしょうに。なぜ当事者団体の代表である私がしているんでしょうか。

この2025年もこういう”笑えない”実情に頭を悩まされるのでしょうか。

一方で、嬉しい出来事もたくさんあったと思います。たとえば、

昨年はたくさんのお問い合わせメールを頂きまして、恐縮の限りでございました。有用な情報提供、当事者の方の貴重な体験談など、私自身とても勉強させていただいております。

私では力不足な点も多かろうと存じますが、頂いたお問い合わせには目を通し、ご助力できることは精一杯させて頂きたいと考えております。

今回の記事が2025年の第一号となりました。関係者の皆様方、同志界隈の皆様方、本年度もどうぞよろしくお願い申し上げます。

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