引き出し屋にご依頼する前に

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©N係長

私はひきこもりという言葉が不適切だと思います。正しくは、社会的難民ではないでしょうか。

ひきこもるという言葉には主体性が感じられますが、自ら”飛び込んでそうなった”方は皆無でしょう。

カスハラやパワハラにより精神疾患を発症し、早期退職。その後、就職活動もうまくいかず、徐々に働かない期間が長くなってくる。ますます就職活動が難航し、家にいる時間が長くなってくる。もともと交友関係も浅く、外部との交流もしだいに少なくなり、自分では気づかずに「ひきこもり」状態となってしまった。

ご本人様もご家族様も、「ひきこもり」なんて考えたこともなかった。そういうケースが多いと思います。

ひきこもりでグーグル検索すると、関連キーワードとして「家族/親の責任/親が死んだら」という言葉が出てきます。また「引き出し屋」「追い出し屋」という言葉もヒットしました。

なぜ引き出し屋に頼るのか

ご本人様よりも、ご家族の皆様が「どうにかしなくては」と不安・焦りを感じ、まずは行政に相談する。しかし、行政からたらい回しにされ、受話器を握りしめ、電話番号を掛け直す気力がなくなってくる。

そこに、民間業者の引きこもり支援団体、自立支援施設の「お任せください!」というチラシの文言が目に飛び込んでくる。

NPO法人や一般社団法人が運営団体だから大丈夫そうだと思う。

ですが、NPOであろうが一般社団法人であろうが、所詮は民間企業。無料ではありません。高額な料金を振り込み、戻ってきたお子さんは以前よりふさぎ込み、「強制収容所に送りやがって」と恨み言。

その後、悪質な引きこもり支援施設「引き出し屋」という言葉を初めて知る。こういう流れになることがあります。

引き出し屋の問題点とは

「引き出し屋」とは、暴力的な方法を用いて当事者を自宅から施設に移動させ、監視下で生活させる「ひきこもり支援」事業者のことを指します。

引用元:障がい者としごとマガジンについて”「引き出し屋」に依頼する前に!「ひきこもり支援」で問題の引き出し屋裁判で損害賠償命令”

当事者の合意を得ずに、親御さんらご家族が事業者と契約をしてしまう。当事者にとっては突然家の外に引きずり出され、車に連行される。恐怖でしかありません。

その際に暴力行為を受け、障害を受けたケースも。施設では地下施設のようなところに監禁される。その悪質性は訴訟沙汰に発展しております。

千葉県在住の30代女性が、適応障害やPTSD(心的外傷後ストレス障害)等を発症したのは、2017年10月にひきこもりの自立支援業者によって自室から無理矢理連れ出されたうえ施設に監禁されたためだとして、業者側と母親に550万円の損害賠償を求めていた訴訟で、東京地裁(下澤良太裁判長)は27日、破産した被告の業者側と契約した母親に対し、連帯して計約55万円の損害賠償を命じる判決を言い渡した

引用元:ヤフーニュース”引き出し屋裁判 母親とひきこもり自立支援業者側に賠償命令判決 共謀を初めて認定”

この訴訟事件では、実際の契約者である母親にも責任が認められています。この事件で、母娘関係が徹底的に崩れたことは言うまでもないでしょう。

母親は「まったく後悔がない」とのこと。結果的に、娘が訴訟を起こせるまでになったのだから「よかった」ぐらいに思っているのでしょうか。

私はこの事件に関して「母親が悪い」「親が悪い」という一言では片づけられないと感じております。それだけ親御さんも追い詰められていた。

ですが、支援者が当事者の自宅に訪問すること自体は、アウトリーチとして福祉支援の一つとして認められております。

アウトリーチ:「外へ(out)手を伸ばす(reach)」という意味。社会福祉分野で、支援機関が通常の枠を超えて手を差し伸べ、支援を届ける取組の意味で用いられてきた。困難を抱えながらも支援の必要を自覚していない、相談意欲がない、支援拠点に足を運ばない人の場合、従来の施設型支援から取りこぼされることが多い。アウトリーチはこうした潜在的なニーズとつながる手法として開発された。不登校や非行、ニート、引きこもり等の若者への対応では、主に訪問支援をアウトリーチと言う。

参照元:公益財団法人 日本女性学習財団”アウトリーチとは”

「引き出し屋」はその手法が暴力的で、悪質性が高いという点が問題なのです。

西宮市のひきこもり支援の実態とは

私はまず「兵庫県 ひきこもり支援」で検索してみました。トップには「ひきこもり総合支援センター」がヒットしました。

神戸市中央区にある精神保健福祉センター内にて、2019年12月に開設され「兵庫県ひきこもり総合支援センター」(兵庫県庁福祉部障害福祉課)があるようです。

ひきこもりの本人及びその家族等に対する段階に応じたきめ細やかな支援を行うため、精神保健福祉センター内に「ひきこもり総合支援センター」を設置し、ひきこもりに関する相談や居場所の設置等の総合支援を実施します

引用元:兵庫県庁HP”ひきこもり総合支援センターについて”

対象者は兵庫県内(神戸市を除く)にお住まいのひきこもり状態の本人とその家族等。神戸市民の方は、神戸ひきこもり支援室が対応。

電話、来所相談。居場所作りも。ひきこもりの方が、わざわざ総合支援センターまで居場所を求めて集うのか?行政のお手盛り感は拭えませんね。

トップページの3つ目には「兵庫県ひきこもり情報ポータルサイト」がヒット。兵庫県からの委託事業として、NPO法人”グローバル・シップスこうべ”が運営しております。

さっそく支援機関の一覧の「西宮市」を見つけると、たった2件がヒット。

「西宮市こころのケア相談」と「西宮若者サポートステーション(一般社団法人キャリアエール)」です。

前者は西宮市の健康増進課が担当し、「こころのケア事業」とも。臨床心理士が電話・面接での相談を”申し訳ない程度”に実施しているようです。

後者の西宮若者サポートステーションは、厚生労働省委託事業。平成25年開所。

兵庫県や西宮市をはじめとした各市と連携しながら、 15~49歳までの方を対象に、一人ひとりの方の状況に合わせて就労に向けての様々なサポートをしています

引用元:西宮若者サポートステーションHP

対象者は現在無業状態の方、または週の労働時間が20時間未満の方のみ。現在就業中で雇用保険に加入されている方は対象外です。利用方法を探ってみました。

まずは電話予約をして、就職・進路相談あるいはこころの相談のどちらかを強制的に受講し、職場体験プログラム、ハローワーク活用講座など、利用ステップを「利用者の流れ」として説明しています。

「ご利用者の声」もUPしていましたが、あまりに短文すぎて、全く参考にならない。ハロワから紹介されたという方がほとんど。うーん。どういうことかな。

実は、この施設は就職させることを目的にした団体で、厳密にはひきこもり支援団体ではないんですよ。ひきこもり就労支援というか、ハロワでうまくいかなかった求職者のサポートをする団体。

ですから、西宮市でひきこもり支援を行う公的な支援団体は、「西宮市こころのケア相談」だけ。あまりにもお寒い現状であることを痛感しました。

おわりに

ひきこもり支援に対する自治体の頼りない姿勢が、悪名高い!民間の支援団体「引き出し屋」に頼らざるを得なくなっていると思います。

ですから、悪質な「引き出し屋」に頼ってしまったお母様が、訴訟で娘から訴えられた。

ここまでされても「自分は悪くない。行政は頼りにならず、他に手段がなかったんだ」というお気持ちも理解できなくはないんです。

ただでさえ、現代日本ではすべて「自己責任」と責められる社会。

精神障害者の方に対しても「あの人は心が弱い人だ(笑)」と小ばかにする実情があります。

もちろん、行政の人たちだって現代日本で育ってきて、その空気を吸って生きてきたわけです。本音ではそのように感じているでしょう。「身体障害者はまだ分かるんだけど、精神障害者はね(呆)」

私は当団体の代表として、ひきこもり(社会的難民)で苦しんでいる当事者の方、ご家族の方に対する無償でのご相談も受け付けております。

私自身、弱者男性、社会的難民の一人ではございますので、力及ばないことも多々あると自覚しております。ですが、何かお力の一つにでもなれたら。

お声に耳を傾けることくらいしかできないかもしれませんが、どうかお気軽にご相談いただければと存じます。

※当HPの管理はすべて代表である私一人で行っていますので、ご返信等にお時間がかかることもあるかと存じます。何卒ご了承のほどよろしくお願いいたします。

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