先日、2024年の3~7月で就労継続支援A型事業所の閉鎖が相次ぎ、4279人のA型事業所雇用の障害者がクビ。そんなショッキングなヤフーニュースが目に飛び込んできました。
そのうち949人は求職活動中、936人は企業や他のA型事業所へ、2073人はB型事業所へ。
B型事業所は、雇用契約を結ぶ労働ではありません。ですので、最低賃金法の適用もなく、支払われるのは工賃です。時給は200円程度。月額の平均工賃は2万円を下回ります。
A型事業所からB型事業所に移った方は、生活がままならなくなるのでは。すごく心配しています。
今回のニュースを見て、A型事業所がどんどん潰れているという印象を受けますが、厚労省のデータを見るとそうでもありませんね。
令和4年3月時点では4228か所。令和5年3月で4472か所。平成27年3月は2668か所であり、年々増加している。令和6年3月は4634か所と最高記録。それが令和6年7月になると4472か所と初めて減少に転じた。
一方で、B型事業所は平成27年3月で9223か所。年々増加の一途をたどり、令和6年7月は17820か所と最高記録を達成。
令和6年3~7月で潰れたA型事業所の受け皿ともなったのでしょうが、就労継続支援ビジネスは全体的に隆盛を極めていると思います。
ぶっちゃけて、儲かるからでしょう。障害者を安く働かせると同時に、お役所から報酬も貰えるボロいビジネスだからです。年々事業所が増加し続けているのが何よりの証拠。
冒頭のヤフーニュースでも触れていましたが、閉鎖の理由はただ一つ。”障害福祉サービスの対価として国が事業所に支給する報酬を4月の改定で引き下げた”ことです。
厚労省の報告書(就労継続支援A型の状況について)を確認すると、どうやら200点満点のスコア方式の加点基準が変更されたらしいのです。
評価基準は、労働時間、生産活動、多様な働き方、支援力向上、地域連携活動。追加された基準に、経営改善計画、利用者の知識及び能力向上。主な改善点を確認すると、
労働時間が5~80点だったのが、5~90点に変更。この労働時間の長さこそ報酬の肝です。厚労省の報告書にも「労働時間の評価について、平均労働時間が長い事業所の点数を高く設定する」とあります。
次に、これまで点数的に同列に位置付けられてきた、生産活動と多様な働き方、そして支援力向上の点数が大きく変わりました。0,5点~35,40点だったのが、
生産活動が−20点~60点、多様な働き方と支援力向上が0点~15点。多様な働き方という抽象的な学級目標ではなく、生産活動に対して厳しく評価されるようになった。そういうことですね。
厚労省の報告書にも「生産活動の評価について、生産活動収支が賃金総額を上回った場合には加点、下回った場合には減点する」とはっきり指摘されています。
これまでは行政から貰える報酬目当てで運営してきた、まともに営業活動もしなければ、障害者にろくな仕事をさせる気もなかった。
そんな事業所の増加に対して、厚労省からはっきりとNOが突き付けられた。就労継続支援A型の一時的な閉鎖増の理由はまさにここにある。そのように感じました。
今回のことを受けて、国は制度設計を見直すべきだと思いました。一般企業に就労できないから、就労継続支援事業所を設けた。だから、アルバイトとの併用は認めない。
この点を改めるべきではないでしょうか。就労継続支援A型でさえ、賃金は月8万円です。これでは生活できない。専業主婦の方でない限りは、一般の健常者からすれば「ダブルワークしなきゃ生活できない」状態。
もしアルバイト先があれば、勤め先の就労継続支援A型が潰れても、労働収入がすぐに0になるわけじゃない。余裕が出来ます。
生活保護もそうですが、行政の考え方は常に「100か0かを選べ!」。少し硬直的過ぎるのではないでしょうか。障害者に少しは下駄を履かせてあげるべきだと思います。
今回、悪質な事業所によって突然解雇された障害者の方々は路頭に迷い、月額2万円の就労継続支援B型に詰め込まれた。
あるいは、中高年ひきこもりを生んでいる最大の要因である、パワハラブラック企業への就職を余儀なくされた方もいるでしょう。今後の対応策としては、対症療法として、
①アルバイトと併用して就労継続支援を利用できるように改善するか、②就労継続支援のみでも最低限の生活ができ、かつ蓄えも得られるような給料(月額15~20万)を出せるようにするか。
パワハラブラック企業の淘汰は、より本質的で長期間の治療が必要な政策課題。こちらも合わせて取り組んでほしいものです。
※就労継続支援A型事業所についてはこちらの記事でも解説しております。ご興味がございましたら、ぜひご一読ください。