境界性パーソナリティ障害と家族問題

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「兵庫県に境界性パーソナリティ障害の家族会があるのかなぁ」と思い、検索してみました。何もヒットしません。非常に残念な結果です。

境界性パーソナリティ障害が流行ったのは2000年に入ったあたりからだと思います。今でも散発的に関連本が出版されてますが、2005年頃がピークだったかなと肌感覚。

当時は「今後は境界性パーソナリティ障害が世間の注目の的になる。不登校、ひきこもりの原因はこれ一色になるわ!」とお祭り騒ぎだったような気がします。

境界例、境界性人格障害、ボーダー、BPDなど。いろんな呼び名がありますね。

私も、家族が境界性パーソナリティ障害者だったため、2000~2010年にかけてこの障害と格闘した経験があります。関連する書籍も読み漁りました。

いまでもこの障害に苦しんでいる「ご家族」の方は多いでしょう。

境界性パーソナリティ障害が厄介なのは、ご本人も苦しいのでしょうが、家族が一番つらい。精神疾患の当事者よりも、周囲の家族が苦しめられる。老親を介護する家族の大変さと通ずるものがあります。

介護に関しては「外部化」できる部分がありますが、境界性パーソナリティ障害は不可能です。

まず簡単に、境界性パーソナリティ障害の特徴を簡単にご説明し、家族の接し方にも触れてみたいと思います。私の体験談も織り交ぜながら。

境界性パーソナリティ障害の特徴5選

そもそも「境界」とは何ぞや、ってところですね。この病名に精神科医の苦悩が現れています。

「この患者は神経症と精神病のどちらにも属さない。おそらくその境界線上にあるんだろう」というのが語源です。

治療先進国はダントツで米国。その米国の医師、治療者ですら「BPD治療は仰天して跳び上がったファウヌを治療しようとするものだ」と治療拒否する方が多い。

BPDはBorderline Personality Disorderの略。境界性パーソナリティ障害の英訳です。

ファウヌというのは、ヤギの角と脚をもった半人半獣で森や牧畜の神を指します。ともかく、BPD患者の治療なんかお断りだということです。

一言でいえば、境界性パーソナリティ障害は医師も逃げ出す病気ということです。

主な特徴5選をあげますと、

①不安定な自己感覚。自己イメージの不安定性。「自分はこういう人間なんだ」という心の核がないので、自分の性格などを語らせると非常に陳腐です。

というか、聞かれるのも不快。とつぜんキレます。

②黒か白かという極端な認知。すべて良いかすべて悪いか、二極思考。

人間の二面性を受け入れがたいため、その内的葛藤を避けようとして世界を黒白で二分して捉える。分裂(スプリッティング)という防衛機制が見られます。

③自分が感情を支配するのではなく、感情に自分が支配されている。

感情の動きの揺れ幅がジェットコースター。感情や衝動のセルフコントロールができない。常に対人関係に不安が生じる。

ちょっと話が合ったからといって、相手をすぐに理想化する。当然そんな理想像は明日にも打ち壊されます。となれば、徹底的に罵倒しまくらないと気が済まない。「信じてたのに、裏切りやがった」。

④著しい衝動性と激しく不適切な怒り。モノを投げつける。壁やドアを破壊する。

常に情緒不安定。キレる。まあ感情や衝動の自己調整能力が著しく脆弱なんです。

⑤他者依存。自分で感情を処理できないもんだから、他人を巻き込みます。家族や恋人が標的。

相手を巻き込んで、当たり散らして自分の感情を発散し、相手を挑発し怒らせようとする。「なんでわかんないのよ!」「死んでやる!」と叫ぶ。自殺のそぶりをする。

まとめると、自分の中の不快な気持ち(怒り)を自分で整理できない。だから、相手に処理してもらおうとする。暴言や暴力を振るい、時には自殺のそぶりをする。相手とゴタゴタする中で自分の感情を発散しつつ、相手を自分の支配下に置き、充足感を得る。

本人よりも、家族がいちばん被害を受けます。「ちょっと困った人だな」というレベルを超えています。

恋人は逃げられるかもしれませんが、家族はそうもいきません。「死んでやるぅ」と大声で叫ばれ、包丁を自分の首元に突き付けて自殺のそぶり。そんな人を下宿させるわけにもいかないので、必然的に同居。

自宅を破壊されるのを黙ってみていることしかできず、夜中に大声で「死なせてぇ!」と叫ぶ。近所の方にもバレバレ。

境界性パーソナリティ障害者の自殺のそぶり。だんだん慣れてきます。ですが、リアクションしないといけない。でないと、どんどん悪化する。大胆な行動を取る。わが家には吹き抜けがあったものですから、「飛び降りて死ぬぞ」と。

実際に境界性パーソナリティ障害者の死因に自殺はあります。肌感覚ですが、家族が相手をしなくなるんですよね。自殺のそぶりに。もう慣れてしまって。

飛び降りるぞと階段から身を乗り出しているうちに、事故で落ちてしまう。彼らの自殺は、そういうケースが多い。自殺にカウントされていますが、事故死という方が適切です。

日本でやんわりと支持療法もどきをしているようなレベルの低い精神科医はともかく。

医療先進国である米国の医師や治療者でさえ逃げ出す。この障害に対峙した人間からすれば納得できます。相手を巻き込んでくるので、本当に神経がすり減ります。

境界性パーソナリティ障害者に家族はどう接する?

残念ながら有効な対処法はありません。彼ら境界性人格障害者、境界性パーソナリティー障害者はホントに「言うことがコロコロ変わる」からです。

はじめは「うんうん。そうだね」と聞いていられますが、昨夜はAさんという人を徹底的に褒めちぎっていた。

よかったね。理解者が出来たんだね。そんな良い方は大切にしなきゃね。良いお友達が出来てよかったぁ。そんな風に安心していたら、

翌日の夕方にはAさんを罵倒しまくる。同一人物のことだと理解するのに数分かかった。「あいつはこんなメールを送ってきやがって!ほんまムカつくわ!」と言うので、メールを確認してみました。

実際は、心から相手のことをいたわる内容で感心しました。彼女らのあまりに不適切な発言、物事の捉え方を共感的に聞くことは不可能。

共感、傾聴の姿勢が必要だと熱弁をふるうお医者様、専門家の意見もわかりますが、残念ながら机上の空論。

「彼女ら」と言いましたが、別に女性批判をしたいわけではありません。境界性パーソナリティー障害者は、若い女性がほとんどです。私の家族もそうでした。男性のケースは聞いたことがありませんね。

30代、40代と年齢を重ねていくと、症状は治まっていきます。

治療の仕方をよく聞かれますが、基本的には自然成熟。根気が必要です。こちらから何か手段を講じることは諦めるべきです。

私も医学書を何冊も読みましたが、プロの精神科医ですら治療を拒否している。認知行動療法とか、支持療法とか、焼け石に水。

ですから、境界性人格障害者の家族を支援するサポートプログラムが唯一の解だと思います。

家族側がうまい対処法を見つける。「BPD患者の家族サポートプログラム」など聞いたことがあります。

もちろん心療内科に通院させて、抗うつ薬など薬物療法はよいと思います。根本的な治療にはなりませんが、一時的にでも薬を服用して落ち着いてもらえればいいのです。

医師、専門家の精神療法や指導ではなく、当事者の家族が集まり、問題を話し合う。苦労しているのは自分だけじゃない。それだけでも大いに救われます。

境界性パーソナリティ障害の背景には、家族問題があることも自覚すべきです。幼少期に必要とされる親の共感と評価は、子どもにとっての「心の栄養」です。

私の家族もそうでしたが、幼少期から親と仲が悪かった。父親からは精神的虐待。会社から帰宅後、深夜まで怒鳴り続ける。母親からも「手のかかる子」扱い。居場所がなかったと思います。

境界性パーソナリティ障害は、人格障害の世代間伝達の傾向があります。うちの場合は、父親がそうでした。この障害の発症原因は家族問題なんです。

境界性パーソナリティ障害の原因は家族問題。家族構成員の中で、もっとも弱いメンバーに「しわ寄せ」がいく。彼女らは犠牲者とも言えるでしょう。

兵庫県にも境界性パーソナリティ障害の家族会が出来ればよいのですが。

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