人口に膾炙してしまったニートですが、明らかに差別用語です。
語源は1999年にイギリス政府が労働者の人口統計を取り調査報告書を作成した際に設けた労働者の類型のひとつ。Not in Education, Employment or Trainingの言葉の頭文字でNEET。イギリスではもちろん差別用語ではありません。
16歳から19歳までの若者のうち、学生でもなく、働いておらず、仕事に就くための職業訓練も受けていないという概念。当のイギリスではもはや使われていないとか。
日本では15歳~34歳までの「働く意思や意欲すらもない」 と精神論が日本独自に付け足され 、意味が大きく変容。2005年以降はマスコミの偏った報道などにより、ニートは「働くことを拒否して、ただ自堕落に生きているだけの連中」というニュアンスに。
参照元:同人用語の基礎知識”ニート/NEET”
総務省統計局の労働力調査をみると、非正規職員、パート・アルバイトは記載がありましたが、ニートは出てきません。
若年無業者という言葉が使われ、「15~34 歳の非労働力人口のうち家事も通学もしていない者」とあります。
いわゆるニートは何人?
ニートという差別用語の定義は「15~34歳で、働けるのに働かない。学校にも就業訓練にもいかない怠け者」です。
ニート数は2022年で75万人と情報が出てきましたが、実際はわかりません。国が調べていないからです。正確なニートの人数は不明です。総務省統計局の労働力調査(2022年)を確認すると、
若年無業者数は、2022 年平均で 57 万人と、前年に比べ1万人の減少となった。若年無業者の人口に対する割合は、前年と同率となった。35~44 歳無業者数は、2022 年平均で 36 万人と、前年と同数となった。
引用元:総務省統計局労働力調査2022年平均結果
若年無業者は、15~34 歳の非労働力人口のうち家事も通学もしていない者。35~44歳無業者も、35~44 歳の非労働力人口のうち家事も通学もしていない者、との定義。
仕事を探しているが、現在失業中の方は完全失業者のカテゴリーとして扱われ、就業者と完全失業者を合わせて労働力人口となります。非労働力人口である若年無業者に、失業者は含まれない。
ですが、若年無業者は「健康上の理由で、働けない」「介護のために離職した」という人たちも含まれているはず。決して「働くことを負けだと思っている怠け者」との定義を総務省はしていません。よって、若年無業者=ニートではないんですよね。
ニートは2022年で74万人説はどこから?
総務省統計局の令和4年就業構造基本調査によれば、非労働力人口に当たる無業者を4313万人。そのうち、非就業希望者が3488万人。非就業希望理由の53.3%、1837万人が「高齢のため」を理由にしています。
他には「病気・ケガ」317万人、「通学」473.4万人も多いです。
「ボランティア活動に従事しているため」が27.6万人、「仕事をする自信がないため」73.7万人、「その他」166.4万人、「特に理由はない」342.4万人。年齢別のデータなし。
結論。就業構造基本調査では15~34歳の方で、病気でもケガでもなく、働くことに忌避感を感じて非就業を選んでいる人数はわかりません。年齢別のデータは未掲載なので。
他には、内閣府の令和4年版子供・若者白書を確認すると、高卒で進学も就職もしていない若者が45197人、大卒で進学も就職もしていない若者が56228人とのこと。合わせて約10万人。
ですが、就職浪人をしている既卒生もいるでしょう。健康上の理由で進学も就職もしていない若者もいるはずです。結局、10万人=ニートの人数とはならないと思います。
ニートの数74万人はどこからやってきたのか、謎です。
潜在労働力人口でも調べてみたが
労働力調査2022年には年齢階級別非労働力人口のデータが出ていまして、15~24歳が601万人。25~34歳が130万人。もちろん学生さんも含まれます。
労働力調査をした時点で、たまたま働いていた学生さんや主婦の方は就業者扱いされます。バイトもしていなかった学生さんが含まれている数値です。
学生さんをニートとは言わないですよね。
学生さんではなく、病気やケガもしていない。就業は出来るけれど働いていないというのは、労働力調査のカテゴリーで言えば潜在労働力人口に当たるかなと思います。
すぐではないが,2週間以内に就業できる”拡張求職者”、すぐに就職できる”就業可能非求職者”の2つが潜在労働力人口です。
潜在労働力人口の数値は出ていまして、15~24歳で6万人。25~34歳で4万人。
総務省統計局の「基本的諸概念と用語」を確認すると、厳密には、潜在労働力人口には”家事や学業ですぐには働けなくても、2週間以内に就業できれば含まれる”とあります。
よって、この10万人にも学生さんや主婦は含まれうるということ。こちらも10万人=ニートの人数とはなりません。
結論は、2022年のニート74万人は根拠なしです。10万人が上限になるとは思いますが、
「病気やケガ」「学校には通っていないが資格の勉強をしている」「ボランティア活動をしている」方々も含まれる数字なんです。つまり、ニートの定義に入らない。実際は10万人よりもっと少ないと予想されます。
国がニートとしてデータを提供していないので、各研究者、識者の方は「自分の納得できる」数字を出しております。わざと水増しして「こんなにも怠けた若者が多いんだぞ!教育してやる!」と鼻息荒い方も。
ニート数に関しては慎重に判断しなくてはいけません。※私の推測した数字も含めてです(笑)。